~セルシウスルート エピローグ~

戦いが終わり光を失ったW.A.の空は,何時にもまして星が綺麗に見えるだろう.そんな空に平静の使徒は浮かんでいた.背中に巨大なリュックを背負い其処から伸びる二本のプロペラを使って宙に浮いているのである.

 

「まぁ愚か者の彼にしては,よくやった方でしょう.」

 

サーモカメラの付いた双眼鏡を覗きながら目下の様子を眺めている.

 

瓦礫とクレーターだらけになった街,負傷者に肩を貸し助け合う人々,そして勝者となった二人の少女のキス……

 

「僕は何を見せられているのか…」

 

双眼鏡から目を離し,呆れた様にため息をつと街の方へ視線を移す.壊滅状態の街の姿はそこに住む人々に重い絶望を与えるには十分すぎるだろう,其れでも彼は硬い表情を崩そうとしない.

 

「2日…僕の予想は当たっているでしょうか……?」

 

我々の相手取る者の力は絶大である.之だけ破壊の限りを尽くしても,彼らならば直接顕現するまでもなく修復してしまうだろう.

僕たちの計画もまた,彼らにとっては鬱陶しいハエですらないのかもしれない.

 

平静の使徒はその場を離れる直前,無表情のまま唇を嚙み呟くだろう.

 

「次は,僕の番ですね.」